ホーロー浴槽は、金属下地(鋼板・鋳物)にガラス質を焼き付けた高耐久で高級な浴槽です。
深みのある独特な艶と清掃性に優れる一方、欠けやサビの発生、交換の難しさなど特有の課題もあります。
本記事では、ホーロー浴槽の材質を基礎からやさしく解説し、FRP・人工大理石・ステンレスとの違いを実用目線で整理します。さらに、交換リフォームが適しているケースと費用・工期の考え方を示したうえで、
入れ替えずにお得に再生できる「塗装」という選択肢を、現役施工者の経験にもとづいて具体的にご紹介します。
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ホーロー浴槽とは|材質と構造(鋼板ホーロー/鋳物ホーロー)
ホーロー浴槽は、金属の下地(鋼板または鋳鉄)にガラス質の釉薬を高温焼き付けした構造です。表面はガラス質なので非常に硬く、汚れ・薬品・色移りに強いのが特長。キッチンのホーローパネル同様、清掃性と艶感に優れる高級素材です。
- 鋼板ホーロー…薄い鋼板にガラス質を焼き付け。軽量で施工しやすいが、ガラス層が薄く(約0.2mm) 欠けからサビが進行しやすいことが課題。
- 鋳物ホーロー…鋳鉄にガラス質を焼き付け。ガラス層が厚い(約1mm)ため欠けにくく耐久性が高いが、非常に重く費用も高めです。
よくある劣化症状
- 表面のザラつき・艶引け(釉薬の微劣化)
- チッピング(欠け)からのサビ発生
- 鋼板タイプは裏面からの腐食が進み、表面にサビ浮き・穴あきが出ることもあります。

他の浴槽素材(FRP/人工大理石/ステンレス)と比較
ホーロー浴槽は高級感と清掃性が特長です。他素材との違いを知っておくと、安心して比較・検討ができます。
違いがひと目で分かるよう、要点を早見表にまとめました。
まずは全体像を一緒に確認しましょう。
素材比較(概要)
項目 | ホーロー(鋼板/鋳物) | FRP | 人工大理石(アクリル/ポリエステル) | ステンレス |
---|---|---|---|---|
表面特性 | ガラス質で硬く汚れに強い・高光沢 | 樹脂系。 軽量・成形自由度高 | 樹脂+無機材。艶・高級感(特にアクリル) | 金属光沢・耐久性に優れるが質感の好みが分かれる |
重量 | 鋳物は非常に重い/鋼板は軽め | 軽い | 中程度 | 中程度 |
価格帯(本体) | 高め(鋳物>鋼板) | 安価~中 | 中~やや高(アクリルはやや高価) | 比較的安価 |
保温・体感 | 鋳物は蓄熱性○ | 中 | 中~やや高 | 中 |
塗装との相性 | 難易度高(要エッチング/専用プライマー) | 良好(下地処理で安定) | 中(アクリルはプライマー選定が重要) | 難易度高(密着管理がシビア) |
交換のしやすさ | 鋳物は搬出入が大変 | しやすい | 中 | 中 |


「交換リフォーム」を選ぶべきケースと基本知識
交換が適している主な状況
- 広範囲の裏錆・穴あきで強度低下が疑われる
- 浴槽サイズ・形状・段差を機能的に変更したい
- お風呂全体(床・壁・天井)を断熱改修/バリアフリーに合わせてリフォームしたい
交換時の工事範囲(在来浴室の一例)
- 解体(浴槽撤去、必要に応じて土間・タイル)
- 既存浴槽を撤去。土間・タイルの解体も必要なので騒音・粉じんが発生
- 配管調整・下地補修
- 給排水・循環金具は新浴槽基準で位置・高さを調整。腐食・漏水はここで補修/交換。床勾配・下地不陸は後工程の防水・納まりに直結
- 新浴槽の搬入・据付
- 搬入経路を事前確認。鋳物など重量物は人員確保。水平・高さ・壁際のクリアランスを微調整して据え付け
- 周囲の下地・タイル復旧
- 縁まわりと壁取り合いをタイルで割付・段差に注意して復旧
- コーキング・通水試験・仕上げ
- コーキングは十分に硬化養生。通水・漏水・排水速度を確認し、最終清掃で完了

費用目安と所要期間
・浴槽本体価格(材質別の相場例)
材質 | 本体価格の目安 |
---|---|
ホーロー(鋳物>鋼板) | 15万~100万円 |
人工大理石(アクリル>ポリエステル) | 5万~80万円 |
FRP | 4万~35万円 |
ステンレス | 6万~25万円 |
※上記は本体価格の相場例です。仕様・サイズ・搬入条件により変動します。
- 交換工事費:4万~20万円(搬出入難易度・復旧範囲で上下)
- ユニットバスごと交換の場合は80万~200万円前後が目安(グレード/付帯工事で変動)
補足:在来浴室は解体量と復旧範囲が費用に直結します。特に鋳物ホーローは搬出入の問題や補強が必要な場合があり、総額が上振れしやすい点に留意ください。
入れ替えずに「お得に」再生|ホーロー浴槽の塗装という選択
交換の半額以下で済むケースが多いのが塗装による再生です。廃材削減・短工期で、営業停止や生活への影響を最小化できます(ホテル・賃貸にも好相性)。
塗装が向いている症状
- 表面のザラつき・黄ばみ・艶引け
- 欠け・軽度なサビ(要適切補修)
- 美観改善・清掃性向上を短工期で実現したい
注意が必要/向かない症状
- 広範囲の裏錆・貫通穴で構造強度が低下している
- 追い焚き配管まわりの腐食が高度(安全優先で交換検討)
※可否は現地診断で判断します。鋼板・鋳物の状態差により下地工程が大きく変わります。
施工の流れ(当社標準)
- 素材・劣化診断/マスキング・養生
- 劣化状況を確認。作業通路や荷物置き場を養生
- 下地処理:ダイヤモンドペーパー/エッチングで足付け(通常ペーパーは不可)
- ホーローは表面が非常に硬いため、通常ペーパーでは足付け不足に。
ダイヤモンドペーパー/エッチングで微細に荒らして密着を確保。
- ホーローは表面が非常に硬いため、通常ペーパーでは足付け不足に。
- サビ除去・成形:機械研磨→エポキシパテで平滑出し→必要に応じ錆転換/メッシュ補強
- 除錆→機械研磨→エポキシ系で平滑出し。腐食が進む部位は錆転換やメッシュ補強を併用。
- 洗浄・脱脂:
- 流水で洗浄→溶剤で脱脂(脂分を除去)
- プライマー:ホーロー専用を選定(密着の要)
- ホーロー専用(エポキシ系)を使用。プライマー選定が密着のカギ。
- 上塗り:ホーロー浴槽用特殊樹脂塗料を吹付け(艶・肌合いを均一に)
- 吹付けで肌合いと艶を均一化。養生と換気を徹底し、塵の混入を最小限に
- 硬化・検査:膜厚・艶・手触りを最終確認
- 強制乾燥→仕上げ。最終確認は徹底的に
→ 工期の目安:通常1日~補修が必要な場合は最大2日
- 強制乾燥→仕上げ。最終確認は徹底的に
費用相場(ホーロー浴槽塗装)
- 補修の必要がない場合:12~15万円
- 補修が必要な場合:15~20万円
※一般的な相場です。浴槽のサイズや補修の度合いで価格は変わります。
長持ちさせるコツ(ご使用上のお願い)
- 研磨剤入りのクリーナー・金属タワシ・メラミンスポンジは使用NG
- 入浴後は夜間もしくは朝の選択終了時に水を抜いておく

素材別のメリット・デメリット(要点整理)
材質 | メリット | デメリット |
---|---|---|
ホーロー(鋼板/鋳物) | 表面が硬く清掃性に優れる・鏡面の高級感耐薬品性・耐久性が高い(特に鋳物)鋳物は蓄熱性が高く湯温が冷めにくい | (鋳物)重量・価格が高め(鋼板)欠け・裏錆が出ると補修難度が上がる塗装難易度が高い(専用下地・プライマーが必須) |
FRP | 軽量・比較的安価で成形自由度が高い塗装適性が良好で再生しやすい | 小傷・色ムラが出やすい美観の持続は素材グレード次第 |
人工大理石(アクリル/ポリエステル) | 高級感(特にアクリル)と上質な艶硬度があり汚れにくい | アクリルはプライマー選定が重要で塗装難度やや高。価格帯が広く、条件により高額になることも |
ステンレス | 錆びにくい・耐久性が高い劣化しても補修量が少ない場合が多い | 塗装の密着管理がシビア(プライマー必須)金属質感の好みが分かれやすい |
施工事例|ホーロー浴槽の塗装でここまで変わる
写真付きの詳しい事例は、施工例ページやInstagramで随時更新しています。ここでは、よくご相談をいただくパターンを中心に、施工例を紹介します。ご検討時の参考にしてみてください。
サビが発生している鋳物ホーロー浴槽
項目 | 内容 |
---|---|
場所 | 大阪府 |
課題 | 複数箇所でサビが発生し、全体に強いざらつきがある |
実施内容 | 下地処理(腐食部の研磨・除錆)→エポキシ系充填→ホーロー浴槽用厚塗りプライマー→専用トップコートで浴槽全面を塗装 |
効果 | 清潔感のある純白に再生。サビ痕を解消し、鏡面の艶となめらかな肌合いを取り戻した |
工期 | 1日半(乾燥・最終検査を含む) |

サビが各所に発生し、表面はザラつきが強い状態だった

真っ白に均一な艶。サビ痕も消え、なめらかな肌合いに仕上がった

過去の補修跡が残り、継ぎ目から赤錆がにじんでいた。

補修跡が完全に消え、面が整い純白の艶に統一された
変色している鋳物ホーロー浴槽
項目 | 内容 |
---|---|
場所 | 大阪府堺市 |
課題 | 喫水線に沿う変色と、浴槽全体のざらつき |
実施内容 | 下地処理後、ホーロー浴槽専用プライマー→専用トップコートで浴槽全面を塗装 |
効果 | 温かみのあるアイボリーが均一に復活。変色は解消し、手触りはなめらかに |
工期 | 1日(乾燥・最終検査まで含む) |

喫水線に沿って変色した鋳物ホーロー浴槽。表面のザラつきが強く、艶引もなくなっている

アイボリー色が均一に復活。変色を解消し、鏡面の艶とすべすべの手触りに仕上がった。
光沢を失った鋳物ホーロー浴槽
項目 | 内容 |
---|---|
場所 | 兵庫県西宮市 |
課題 | 表面の光沢低下とカサつき。エプロン部の経年劣化が目立ちます。 |
実施内容 | 下地処理(旧汚れ・劣化塗膜除去/足付け・脱脂)→エプロンに補強下地パネルを施工→ホーロー浴槽専用プライマー→専用トップコートで全面塗装 ※カウンターと窓枠も同色で塗装 |
効果 | オフホワイトで統一し、柔らかく温かみのある仕上がりになりました。カサつきが解消し、手触りはすべすべになりました。 |
工期 | 2日(乾燥・最終検査まで含みます) |

光沢がなくくすんだホーロー浴槽。エプロン部の劣化が進んでいた

エプロンに下地パネルを張りオフホワイトで塗装。カウンターと窓枠も同色で統一し、一体感が出た。

光沢が失われ、くすみが目立つ状態。エプロン部の劣化も確認できた

柔らかい印象のオフホワイトで塗装。浴室全体が明るい印象に仕上がった
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交換 vs 塗装|どう選ぶ?
交換か塗装で迷われたときは、まず浴槽の状態とかけられる時間・費用、そして変えたい機能の有無で考えると分かりやすいです。
目安としては、
・サビの劣化がひどい/サイズや段差を変えたい → 交換
・見た目や手触りを短工期でリフォームしたい → 塗装がおすすめです。
以下では、安全性・構造、機能変更の必要性、予算・工期、営業や生活への影響の4つの軸で、現場での決め方をやさしくご案内します。迷ったら、現地診断で一緒に最適解を確認しましょう。
安全性・構造から考える
- 交換が向く例:広範囲の裏錆・貫通、底面のたわみ、ガタつき、循環金具まわりの腐食が大きい、漏水の疑いがある。
- 塗装が向く例:表層の劣化(ザラつき・艶引け・変色・小さな欠け)、初期サビ、手触りや見た目の回復が主目的。
- 不明な場合は専門業者に相談する事をおすすめします。
機能変更の必要性から考える
- 交換が向く例:サイズ・形状を変えたい、またぎ高さを下げたい、手すりや断熱浴槽など機能を大きく変える計画がある。
- 塗装が向く例:色・艶・清掃性を整えたい、印象を明るくしたい、既存レイアウトはそのままで美観と使い心地を改善したい。
予算・工期から考える(目安)
選択肢 | 目安費用 | 目安工期 |
---|---|---|
浴槽のみ交換(在来) | 本体+工事で数十万円〜 | 3日〜(解体・復旧含む) |
ユニットバスごと交換 | 80〜200万円前後 | 3〜10日(規模・付帯工事で変動) |
ホーロー浴槽の塗装 | 12〜20万円 | 1〜2日(乾燥・検査含む) |
営業や生活への影響から考える
- 法人(ホテル・賃貸・管理物件):交換は停止期間が長くなりやすい一方、塗装は短工期で運用を止めにくいのが利点です。
- ご家庭:交換は複数日の在宅対応が必要になりがち。塗装は当日〜翌日の入浴制限を見込めば、生活影響を抑えやすいです。
- 臭気・騒音:どちらも養生・換気・工程管理で軽減します。事前に作業時間帯・乾燥時間をすり合わせておくと安心です。
迷ったらこの順で決めましょう
- ① 現地診断:安全性・構造(裏錆・強度・配管)を点検。
- ② ご要望整理:機能を変えるか/見た目を整えるかを明確に。
- ③ 両案比較:交換案と塗装案の費用・工期・影響を並べて検討。
- ④ 工程計画:工期や入浴再開タイミングまで含めてスケジュール化。
まとめ
- 素材の本質:ホーローは金属+ガラスで艶・清掃性に優れます。欠けやサビは早めの対処が安心です。
- 判断基準:ひどいサビやサイズ変更など機能を変えるなら交換、見た目・手触りの回復なら塗装が効率的です。
- 目安感:交換は数十万円〜(ユニットごとで80〜200万円前後)、塗装は12〜20万円/通常1日、最大2日です。
- 安全性に不安がある(広範囲の裏錆・貫通・漏水の疑い)
- 交換を第一候補にします。
- サイズ・形状・またぎ高さを変えたいなど機能変更が目的
- 交換が適しています。
- 艶・色・手触りを整えたいなど美観回復が目的
- 塗装が有力な選択肢です。
判断に迷う場合は、本文の比較表・費用目安・事例を参照しながら色々と比較検討してください。
必要に応じて、専門業者に現場調査を依頼して、状況とコスト面を確認すると安心です。
ホーロー浴槽の塗装・再生に関するよくある質問(FAQ)
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適切な下地処理(足付け・脱脂)とホーロー専用プライマー、ホーロー浴槽用塗料を使用すれば、10年以上の美観維持が目安です。剥がれは下地不良で起こりやすく、施工手順と日常ケアで大きく差が出ます。
-
追い焚きは可能で、まったく問題ありません。しかし、業者によっては対応していない場合もあるので、事前にしっかり確認してください。
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サビは除錆+エポキシライニングで補修後、塗装で再生できます。広範囲の裏錆・貫通・強度低下がある場合は交換がおすすめです。
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標準1日、最大2日(補修の程度によります)。入浴再開は塗装完了の翌々日以降が目安です。
-
ホーロー浴槽の全面塗装は12〜20万円が目安です。浴槽のサイズ、補修の有無で上下します。
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現場で調色可能なので、ご希望の色で塗装できます。
すぐに判断!